「働くルール」で、日本は大幅に立ち遅れている

 

 日本共産党は、来年1月13日から、第25回党大会を開きます。

すでに、「大会決議案」を発表して、全国の党組織での討議が始まっていますが、そ

の「大会決議案」の中で取りあげられている「世界と日本」の問題を数回に分けて紹介

することにします。

 このホームページをお読みになっているみなさんは、どのようにお考えになるのでし

ょうか。ぜひ意見・声などをお寄せ下さい。

 

 今回は、私たち働く者にとってもっとも大切な「働くルール」についてです(内容は、

いずれも「しんぶん赤旗」の記事からです)。

 

1.日本は「国際労働機関(ILO)」の条約を、4分の1しか批准していない 

  働くルールに関する“世界標準”ともいうべき「国際労働機関(ILO)」が採択

 した183の条約(失効5条約をのぞく)のうち、日本はわずか4分の1にあたる、

48の条約しか批准していません。

 

特に日本は、1号条約(8時間労働制)をはじめ18本の労働時間・休暇関係の条

約を1本も批准しません。こんな国は主要な先進資本主義国のなかで、米国と日本だ

けです。

 また日本は、「雇用における差別禁止条約」(111号)、「解雇規制条約」(158号)、
「パ
ートタイム条約」(175号)など、いま焦点となっている一連の条約も批准してい
ません。

ILOは、1917年のロシア革命で生まれたソビエト連邦が8時間労働制を制定し
ことが契機となり1919年に発足し、その第1号条約が1日8時間・週48時間労働です。

 このように、90年も前にできた条約を日本がいまだに批准していないのはなぜな

のか。それは、残業についてILOが“どうしても必要な緊急な時に限る”としてい

るのに対して、日本は“労使の協定があれば認める”として、財界・大企業のいいな

りで上限を法律で規制していないため、批准しようにもできないのです。

 その結果、年間総労働時間が、ドイツやフランスと比べて日本は460時間以上も

長くなっているのです(06年の製造業での比較)。


2.ヨーロッパでは、パートの均等待遇、有期雇用の制限など、「社会的なルール」

づくりがすすんでいる
欧州連合(EU)では、経済的共同体の関係が発展するにつれて共通する「社会

 的なルール」づくりを積極的にすすめてきており、特に1990年代以降、社会労働政

策で共通のルールを確立する動きがすすんでいます。

 ・労働時間指令:残業、変形労働時間を含めて週48時間を超える労働の禁止

・パートタイム労働指令:パートタイムとフルタイム労働者の均等待遇を定める

・有期労働指令:雇用契約期間の定めのある労働は合理的理由がある場合に限定

・派遣労働指令:派遣労働者と正社員との均等待遇を定める

  また、欧州規模で労働組合や経営者団体、公共企業体の協議が行われ協約が結ばれ

 るという、ルールづくりをすすめる「制度的枠組み」もつくられています。

  いま、ヨーロッパ諸国でも世界経済危機の被害を受け、失業者も出ていますが、日

 本のように、仕事を失うと同時に住居も奪われ、ホームレスに突き落とされるとい

 う事態は起こっていないということです。それは、労働者のなかで非正規雇用労働者

 の割合が1割前後であり、失業給付が1年から3年程度保障され、生活扶助も手厚い

 うえに、住まいに関する権利が国民に広く保障されているからです。

  日本共産党は「ルールなき資本主義」と言われる日本の社会のあり方について「欧

州の経験は、日本の経済の民主的改革をすすめるうえで参考になる」としています

 

3.日本の男女正規労働者の賃金格差は改善すすまず、OECD(経済協力機構)

加盟国の平均と比べてもかなり大きいのが現状

  国連加盟192カ国中186カ国が批准している女性差別撤廃条約(197912

 18日、国連総会で採択)は、雇用にかかわる男女平等、女性の社会進出と家族の問

 題を両立させることなど、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃を、締約国と政府

 に義務付けた画期的な国際条約です。

日本ではこの条約を1985年に批准しましたが、実質的にはまったく実行していません。

  たとえば、賃金の男女格差(パートタイム労働者を含む)をみても、男性を100

として、女性は50.7(2008年)であり、批准当時(1985年)の51.8とまった

く改善されていません(厚生労働者「毎月勤労統計調査」より)。

格差が徐々に縮小しているといわれる正規労働者の男女賃金格差でも、OECD

(経済協力機構)加盟国の平均82%に対し、日本は67%です。

 今年8月、国連女性差別撤廃委員会から日本政府に出された勧告は、次のように厳

しく批判し、条約の完全実施にもとづく差別の是正を強く求めています。

「本条約が、拘束力のある人権関連文書として、また締約国における女性にたいす

 るあらゆる形態の差別撤廃及び女性の地位向上の基盤として重視されていない」