私たちの見解

原発から撤退し、自然エネルギーの本格的導入を
                       ― 日本共産党はこう考える(その4)

 このホームページ読者のみなさんは、今回の東京電力福島第1原子力発電所の事故とその後
の事態についてどうみていらっしゃるでしょうか。

 日本共産党は、原子力発電についての危険性を1960年代から指摘し、国会でも取り上
げてきましたが、今回の事故を受け、6月13日に、「原発からのすみやかな撤退、自然エ
ネルギーの本格導入に向け、国民的討論と合意を」という提言を発表しました。

 そして、政府・与野党各党への申し入れはもちろん、現在、全国の各団体と懇談をすすめ
ています。また、英訳文を作成し、6月30日に在京の148カ国の駐日大使館に送付しま
した。

 以下に、そのポイントを紹介しますので、読者のみなさんもぜひ読んでみて下さい。
 ご意見・ご感想もお待ちしています。

1.福島第1原発事故が明らかにしたものは何か

 第一は、原発事故には他の事故にはない「異質の危険」があるということです。
 放射能汚染は福島県から静岡県まで広範囲に広がり、土壌・水道水・牧草・農水産物など
に被害をおよぼしています。とりわけ懸念されるのは人体、特に子どもへの健康被害です。
 たとえ低線量でも将来、「がん」などを発症する危険があります。
 また、多くの住民が避難を強いられ、地域社会が丸ごと存続できるかどうかの危機にもみ
まわれています。
 このように、空間的、時間的、社会的に類のない「異質の危険」をもたらすのが原発であ
り、その存在を社会的に許容できるのかが問われます。

 第二は、いまの原発技術は本質的に未完成で危険なものだということです。
 100万キロワットの原発が1年間稼動すると、広島型原子爆弾1000発を超える「死
の灰」が溜まります。しかし人類は、この「死の灰」をどんな事態が起こっても、原子炉内
部に閉じ込めておく手段(技術)を開発していません。
 それは、わずか30年の間に起こった三つの原発事故(スリーマイル、チェルノブイリ、
福島)が証明しています。
 さらに、「死の灰」の塊である「使用済み核燃料」は処分する方法がなく、貯蔵して冷却
を続けなければならないのです。

 第三は、こうした危険性のある原発を、世界有数の地震国であり津波被害の大きい日本に
作ってよいのかということです。
 浜岡原発は大地震が近いと予想される場所に立地しています。福井原発は近畿の水がめと
いわれる琵琶湖に近いところにあります。どの原発も危険が一杯です。

 第四には、歴代政権が電力会社の経営陣とともに「日本の原発は安全」という「安全神話」
にしがみつき、警告を無視して、重大事故への備えをとらなかったことが、今回の深刻な結
果をもたらしたということです。
 とりわけ日本政府がスリーマイル、チェルノブイリの二つの炉心溶融事故からまったく学
ばなかったことは重大です。二つの事故後、国際原子力機関(IAEA)は、1988年に
「原子力発電所のための基本安全原則」の勧告を各国におこない、過酷事故への拡大防止策
と影響緩和策をとるようよびかけました。しかし、日本政府はこの勧告を無視し、「日本で
は過酷事故は起こりえない」とする方針を決めたのです(1992年)。

2.原発からの撤退の決断、5〜10年以内に原発ゼロのプログラム策定、

  自然エネルギーの本格的導入を提案

 「提言」は、福島原発事故が明らかにした事実をふまえ、政府にたいし、「原発からの撤退
の政治的決断」、「5〜10年以内に原発ゼロのプログラムの策定」、「自然エネルギーの本
格的導入と、低エネルギー社会にむけて国をあげて取り組む」ことを求めています。

 原発からの撤退をどのくらいの期間でおこなうのか、日本のエネルギーをどうするかにつ
  いては、国民的討論をふまえて決定されるべきですが、まず必要なことは、原発からの撤
  退という大方向を国民多数の合意とし、政府にその決断を迫ることです。


 原子力発電を続けることのあまりに巨大な危険を考えるならば、できるだけすみやかに原
  発から撤退することが強く求められていますが、同時に電力不足による社会的リスクや混
  乱は避け、地球温暖化を抑止するという人類的課題も考えることも重要です。そのために
  も自然エネルギーの本格的導入と低エネルギー社会への転換にむけて、あるゆる智恵と力
  を総動員し、最大のスピードで取り組む必要があります。こうした立場から、5〜10年
  以内を目標にした撤退プログラムを策定することを提案しています。

  企業などの自家発電も含む日本の総発電量に占める原子力発電の割合は25%(2009年実
  績)です。5〜10年の間に電力消費量を10%程度削減し、現在の総発電量の9%であ
  る自然エネルギーを2.5倍程度まで引き上げれば原発分をカバーできます。

 「原発ゼロ」にむけてただちに「原発縮小」に踏み出すことも必要です。福島、浜岡原発
  の廃炉・プルトニウム循環方式からの撤退、老朽原発の廃炉、住民合意の得られない原発
  の停止・廃炉などです。
また、原発停止から廃炉までには一定の時間がかかります。その
  間、考えうる限り安全対策をとるとともに、強力な権限と体制をもち、原発推進機関から
  完全に分離・独立した規制機関を緊急に確立することです。


 原発からの撤退と同時並行で自然エネルギーの本格的導入と低エネルギー社会にむけ国を
  あげて取り組んでいくことを提案しています。日本は自然エネルギーの導入に大きな可能
  性をもっています。太陽光・中小水力・地熱・風力の可能性は20億キロワット以上で、
  日本にある原発54基の発電能力の40倍。今後5〜10年で総発電量の2〜3割を自然
  エネルギーにすることは日本の技術水準からみても決して不可能ではありません。
  問題は、電力需要も、温室効果ガス対策も、原発に依存し続けてきた政治の遅れにこそあ
  ります。この5年間に原子力対策には2兆円以上の税金がつぎ込まれたのに、自然エネル
  ギー開発には6500億円弱なのです。
  自然エネルギーの本格的導入は、新たな仕事と雇用を生み出し、地域経済の振興と内需主
  導の日本経済への力になります。自然エネルギーの買い取り制度を改善し、固定価格での
  全量買い取りをすすめ、風力発電の環境基準の設定などの対策も求められます。
  また、低エネルギー社会へむけては、エネルギー消費削減のカギとして、「大量生産、大量
  消費、大量廃棄」、「24時間型社会」などの抜本的な見直しをすすめることも提案して
  います。
 
 「提言」は最後に「国民のあいだで対話と共同をひろげ、“原発からの撤退”という一致
  点での国民的合意をつくりあげよう」とよびかけています。

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